オリジナル小説一覧へ




お守






 仔猫が首からお守を下げて歩いていた。首輪でなくて、お守。これ如何に。
 よく見ると、不恰好な縫い目のお守で、そのくせ白い猫に映える赤だというのが笑える。いや、ええと、微笑ましい。手作りなのだろう。仔猫の小さな体には少しばかり大きく、重そうだなとか邪魔そうだなと思ったが、ちぐはぐな不恰好さがかわいらしかった。いや、そこは素直に、ほんとに。
 しゃらしゃらと軽い音がした。繊細な鈴がちりんちりんと跳ねて鳴っている。
 一体どこに鈴をぶら下げているものか、座敷童子のような、見事なおかっぱ頭の少女が、道の向こうから現れた。
 黒々とした目でジッと見られて、猫の鼻先をつついて遊んでいた俺はギクリとする。
「この子、変なものを見るの」
 淡々とした声で少女は言った。
 あたし、今日の朝卵焼き食べたの、とか、お隣のまーちゃんと明日お出かけなの、とかそういう、見かけた大人にとりあえず報告してくる子供の感じ。淡々としたしゃべり方だ。
 それはつまりその、猫で遊んでたのを責めてる訳ではないな、そうだな。そうだろ。
「変なもの?」
 確かに、猫はよく何もない空中をジッと見ていることがある。
 だがそれは単に猫の習性なのではないか?
 いや、確かに動物は霊を見たりしているとかよく言うが、だがしかしそれを誰が確かめたのだ。と、ひねくれ者は考えるのである。
 よく何もない空中を見ながら人と話したりしていて「猫みたいだな」と言われる俺としてはやはりだな。
 だいたい、霊とか信じないし。恐いし。
「だからお守作ってあげたの」
 いかにも手作り感あふれるこのお守は君のこさえたものでしたか! さすがにちょっと、不恰好とか思ったことを後悔する。そういうお守に効果があるかどうかというと、結局はその気の持ちようというか猫の気の持ちようというのもおかしな話だが、「守りたい」という気持ちも大事だと思うので効果もある気がするのだが。子どもの気持ちだと余計純粋だろうしな。
 だけどやっぱり、猫がなに見てるかなんて分からないし恐いし考えたくないものであるのだよ。
「お兄さん、知らないの」
 ごにゃごにゃと考えていると、本当に底抜けに黒い目がじっと見て言う。
「何を?」
「知らないならいいよ」
「え、だから何を?」
 少女はこたえなかった。
 くるりと踵を返す。ひときわ大きく鈴が鳴った。そしてまた、しゃらしゃらと鈴の音をさせて去っていく。
 他の音は途切れて何もない。
 猫があくびをした。
「バカが」
 つぶやきがポッツリ落ちた。


終わり





一言 




オリジナル小説一覧へ




お題バトル参戦中、一作書きあがって余った時間でごそごそ書いておりましたー。
テーマ「しあわせ」
お題「仔猫」「お守」
ちなみに原稿用紙3枚ちょい。制限時間2時間(……で2作書いたうち1つ)

しあわせにはならなかったから、お題バトルとして成立しないなーと思っていたのですが「知らないしあわせってやつでは」と言われたので、なるほどポンと(笑)。頑張ってお題4つ使えばよかったなー。


SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送